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詩人茨木のり子とふるさと西尾

 私が、詩人茨木のり子さんと出会ったのは、まだ中学生のころ。当時、母は毎月『装苑』という婦人雑誌を取っていて、巻頭ページを飾っていたのが、茨木さんの詩でした。少女の私は、毎月どんな詩が届くのかが楽しみでした。その詩から連想する詩人茨木のり子さんは、すっきりと背筋の伸びた人に思えました。いつしか人生も後半になり、バイオグラフィーワーカーになった私は、かつて中学生の頃に憧れた詩人の人生を、作品と重ねてみたくなりました。彼女が愛知県西尾市で幼少期から思春期を過ごしたということを知り、いつかは彼女が育った場所に行ってみたいものだと思い続けてきましたが、2月、その願いがかないました。

西尾市岩瀬文庫で

西尾市の岩瀬文庫で開かれた「詩人茨木のり子とふるさと西尾」展。岩瀬文庫は日本初の古書ミュージアムです。こんな素晴らしい財産が西尾市にはあるのですね。本当にびっくりしました。

静かな館内に心温まる展示。地元だからこそなのかもしれません。世田谷文学館での企画展も感動しましたが(なんせ装苑の巻頭ページが大集合でしたし)、岩瀬文庫の展示もなかなかのもの。後年「吉良のチェホフ」と詩の中で詠んだお父さんの絵もありました。優等生ののり子さん。頑張り屋ののり子さん。お嬢様ののり子さん。明るい海辺の空の下、はつらつとした姿が目に浮かびます。


1階の展示コーナーには、詩の人気投票も。

一番人気は「自分の感受性くらい」、「倚りかからず」あたりでしょうか。「私が一番きれいだったとき」、「汲む」もなかなか得点が高そうです。で、私は何に投票したかって? 甲乙つけがたいので、ちょっとマイナーな「一度視たもの」にシールをポン!!

 

休憩コーナーで、ケーブルTVの茨木さんの番組を見たあとは、お抹茶を一服。さすが、お抹茶生産日本一の西尾市です。その後、昼食をいただいたお店でも再び一服。結構なお手前でございました。

少し車を走らせて、海の見えるカフェに。

波間に鳥たちの群れ。トンビが悠々と空を舞っています。

遠くまた近く、見えるのは知多半島? それとも渥美半島?

 

ふるさとの多彩な海岸線を誇る伊勢志摩が私の海の原点。

なので愛知の海には物足りなさを感じていたのですが、

この日の海は極上でした。

おそらく茨木のり子展の余韻があったのでしょう。

青く澄んだ海もやがて日が陰りはじめると空も島影も茜を帯びて。

ふと浮かんきたのは嶋崎藤村の詩

~湧きて流るるやほ潮の そこにいざよふ海の琴 調も深しももかはの

よろずの波を呼び集め ときみち来ればうららかに 遠く聞こゆる 春の潮の音~

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