11月のバッチフラワー
ワイルドローズ
カテゴリー 現実への無関心
英名 Wild Rose
学名 Rosa Canina
和名 カニナバラ 野バラ
キーワード あきらめ 無気力
はっきりとした十分な理由もなしに、自分の周りで起こる事柄に対して諦めの気持ちを持っていて、生活を当り障りなく過ごし、物事をそのまま受け入れて、物事を良くしたり、何か楽しいことを見つけたりという努力はしません。そして、不平を言うこともなく、人生における戦いを放棄してしまっています。Dr.Ed Bach「12ヒーラーとその他のレメディ」より
英国バッチセンターでレメディが作られている、ネルソンバッチのトレードマークにもなっているワイルドローズ。バッチフラワーの中では、もっとも大きな花(直径5㎝程度)で、こんなに愛らしく優しい花姿をしているのに、その指標は「人生に対する熱意や興味のなさ」という、なかなか厳しい状態を表しています。バッチの『なんじ自身を癒せ』の第七章では、ワイルドローズを彷彿とさせる描写が何度か出てきますが、退屈でいること、諦めてしまうこと、人生は単に果たすべき義務ではないにも関わらず、まるでそのように生きてしまうこと。そんな状態が続いたら、当然病気に罹りやすくなるでしょう。バッチ博士は医師でしたから、診療をしつつ、そういった傾向を持っている人々と病むことの関連性に気づいたのかもしれません。
自分がイメージする「人生の完璧な絵」を、固定すること自体、実際にはありえないことですが、私たちはどこかでそういった幻想を求めて生きているようにも思います。それは私たちを努力や挑戦に向かわせ、夢を語り、向上心などにつながる肯定的な力になることもあれば、逆に挫折感や不安や恐怖心を生み、葛藤へと向かわせることもあるでしょう。
人は誰でも、何かを諦め手放し、あるいは受容し選択して今に至っているのですが、自分の土台となる生まれてきた時代や環境、家族、きょうだいの順番、性別などは、基本的に変えることは不可能であり困難です。けれどそこに困難さを感じるからこそ、人生の問いが生まれ、思わぬ展開~成長へ導かれていく可能性もうまれてくるのです。
私自身、周囲と自分との違いを意識し始めた、おそらく9歳前後から、感情にバリエーションが出てきたように記憶しています。なぜあんなに怯えたのか、それがどこから来るのか、それをどう表したらいいのか、感情の基軸、土台を形成しているのは、いったい何だろうと探っていくうちに出会った本が『愛着障害ー子ども時代を引きずる人々』岡田尊司(光文社新書2011)でした。
現実への無関心のカテゴリーに入っているレメディ群は、ワイルドローズに限らず、行為との関係において、意志の在処を観ることでより明確になります。今を生きられない、今ここにいない、というのは、一時的に疲れすぎていたり、心が何かに囚われていたりしても起こり得ますが、長期的に現実を眠らせてしまうには、それなりの理由があるはずです。
「愛着とは、人と人との絆を結ぶ能力であり、人格の最も土台の部分を形造っている。人はそれぞれ特有の愛着スタイルをもっていて、どういう愛着スタイルをもつかにより、対人関係や愛情生活だけではなく、仕事の仕方や人生の対する姿勢までも大きく左右されるのである(『愛着障害』より)」
ワイルドローズに該当するのは、回避型とよばれる愛着スタイルだと思われます。人見知りが始まる生後半年から1歳半の間(臨界期)が愛着形成にとって最も重要な期間とのことですが、その時期にどれだけ安定した愛着形成ー養育者(主として母)と強い絆ーが育まれたかによって、その後の人生は大きく左右されるようです。つまりこの世は安心できる場所で、周囲の人は自分の助けになってくれると信じられるという感覚が育つかどうかの基盤が、こんな早期に出来上がるのだとしたら、自分の子育ては大丈夫だったかしらと、ヒヤッとさせられます。
ワイルドローズの無気力や無関心、人生の放棄が、すべて愛着という切り口だけで説明できるわけではありませんし、どんなに安定した愛着スタイルの持ち主であっても、生まれてこの方、諦めたり無気力になったりしたことは一度もない、という人はいないでしょう。誰もがその状況になり得ますし、特に無自覚でいることも多いから、気づかないで通り過ぎていることはいっぱいあるはずです。
私が自分のワイルドローズを意識したのは、他者の「老い」を自分に投影した時でした。説明のしようのない悲しみと怒りと諦めの気分に閉ざされたあと、猛烈な無力感、疲労感が私を襲いました。もちろん私はバッチ使いですから、朝の習慣としてムードレメディを選び、オリーブやホーンビームを飲みました。でも全く疲れがとれないのです。そこでやっと、ワイルドローズ?と気づいたわけです。驚いたことに飲んですぐに効果を感じました。朝、それまでと違って背筋がすっきりと伸びた感じがあり、ピントが合った時のように物事がクリアに見えました。ずぶずぶと泥の中に身を沈めていたような疲労感が、跡形もなく消えていたのです。
実感としてワイルドローズの状態に陥ると、心身がこれほどダメージを受けるということは、新たな発見でした。『なんじ自身を癒せ』の第七章に書かれているように、病への耐性が著しく落ちていく予感がありました。ワイルドローズの使い方として、生育歴にトラウマを抱える人にはスターオブベツレヘムとともに、現実逃避や体調不良にはまり込む時にはアグリモニーもいいかもしれません。また愛着障害の不安定型の人にはチコリーもきっと役立つでしょう。無意識の中に埋もれているワイルドローズを意識化することによって、生への意欲は甦り、日々の細やかな出来事に喜びを見いだすことにつながるのではないかと思っています。人はどんなにワイルドローズに陥ろうとも、どんな時でも越えていくことができるということも。
BFRP東海 レメディ研究部ブログ
こんなの書いてたことも
新月から満月へ~満月から次の新月へとレメディを
1種類ずつ飲んでは、感じたことを書いています。(18種)
この時は受容とあきらめの違いに注目していました。