ノースヨーク・ムーアズ ドライブ旅行2
ところで、バッチフラワーのレメディとなっているヘザーの学名は、Calluna Vulgaris といいます。私がレメディを学び始めた頃、和名は「夏咲きエリカ」と書かれていたのを見て、てっきりヘザーはエリカだと思いこんでいましたが、ヘザーはカルーナ属だったのです。でも書籍によってはヘザーをヒースと書いてあるものもあって紛らわしいのです。
小説『嵐が丘』に登場する「ヒース」は、イギリスの原風景と思われますが、まずはウィキペディアで「ヒース」を調べてみました。
ヒース(Heath)は、本来はイギリス北部、アイルランドなどにおける、平坦地の荒れ地のこと。また、ヒース荒地の埴生を構成するエリカ属の植物もヒースと呼ばれる。とあります。つまり荒地であり、そこに生える植物をもヒースと呼ぶということなのですね。
薄い表土と砂でできており、耕作や牧畜には適さず、人口密度が低い。表土に生えるヒース(heath)やヘザー(heather)と呼ばれるエリカ属の植物によって砂の飛散が抑えられている。ヒース(荒地)は概ね広大で未整備であり、かつては居住はおろか移動の障害ともなった。17世紀の調査ではムーアなどの荒地を含め、イングランドとウェールズ全体で800万エーカーの荒地が存在したが、18世紀の囲い込みによって耕地化が試みられた。今日でもイングランドには500万エーカーの荒地が残されている。
上記の文中には、「ヒースやヘザーと呼ばれるエリカ属」となっていますが、ヘザーはカルーナ属。では、その違いは?両方ともツツジ科、近隣種であることは間違いなさそうです。
エリカ属(学名:Erica)とは、ツツジ科の植物の属のひとつ。700種類以上の種があり、常緑性の木本で、低木から小高木になるものまである。樹高はほとんどが1m以下と低いが、一部には5mを越えるものがある。多く枝を出し、葉を輪生状につける。
カルーナ属とはツツジ科に属する植物。この属の種はギョリュウモドキ(Calluna vulgaris)1種のみだが、変種が多数ある。常緑低木。ヨーロッパのヒースやムーア、北アフリカに分布。酸性土壌を好み、耐寒性はあるが、高温多湿に弱い。葉はやや多肉質で三角形をしており、花は総状花序で、色は白色から深紅色、花期は6月から9月ごろ。エリカ属(いわゆるヒース)と近縁。
ムアランドにはヘザーやヒースが混在
Heather / Ling(Calluna vulgaris)
ヘザー/リング
これがレメディに使われているカルーナ属のヘザーです。バッチ博士は、「美しいほっそりとした形の、小さなローズピンク色の花」と形容しています。カルーナ属は1種のみ。個体差なのか、変種なのか、白っぽい、あるいは濃いピンク、米粒のような小さなものから大きめの花まで、色も大きさも微妙な違いがあります。
Bell Heather(Erica cinerea)
ベルヘザー
花はヘザーに比べて少し大きく、明るい紫で、釣鐘の形をしたベルヘザー。ヘザーという名前ですが、これはエリカ属、ということはヒースの一種ということなのでしょうか。葉はヘザーに比べると小さくて短い松の葉みたいです。付き方の違いもお判りでしょうか。葉が輪生状に葉がついているのもカルーナ属とのちがいです。
Cross-leaved Heath (Erica tetralix)
クロス・リーブド・ヒース
密集している部分では分かりにくいのですが、名前のとおり、葉が十字形になっているヒースです。これもエリカ属です。ベルヘザーより、花はやや大きめ、色は薄めといった感じです。葉は灰味がかった緑です。
ムーアには、このように様々なヒースやヘザーが絡み合うように生え、甘い香りに誘われて、蜂が一杯飛んでいます。そうしてノースヨークシャー産のヘザーだけでできた蜂蜜を、人間が喜んでいただくというわけです。ウイスキーに使われるピート「泥炭」は、ヘザーが枯れた後、長い年月をかけて炭化し、地層として堆積した泥のような塊のことですが、スコッチウィスキーの独特の味わいと香りは、ヘザーから生まれるというのも、いかにヘザーがこの土地と深いつながりがあるか、ということがわかります。日本では春になると、桜の開花にあわせて、天気予報で、何分咲きといったニュースが私たちの心をかきたてますが、前ページでバッチ博士に、ヘザーが咲き乱れるのをみると、息がとまりそうになるの、といった女性患者にとっても、きっと郷愁を誘う原風景なのでしょう。