5月のバッチフラワー
ミムラス
カテゴリー:不安と恐れ
英名:Mimulus
学名:Mimulus Luteus (現代の学名 Mimulus guttatus)
和名:ミゾホウズキ
キーワード:対象がわかっている恐れ
世の中で起こること、病気、痛み、事故、貧困、暗闇、孤独、不幸などに対する恐れのためのレメディです。日常生活の中で感じる恐れです。このタイプの人は、恐れを心の中に静かに秘めていて、それを人に気軽に話したりすることができません。
Dr.Ed Bach「12ヒーラーとその他のレメディ」より
新型コロナ感染症拡大のニュースが、世界中を駆け巡るようになって以来、不安のレメディ~ミムラスやアスペンの小瓶に、これまで以上に手が伸びるようになった。思えば、こんなふうに世界中の人々が、同時的に共通する不安を抱えたことがあっただろうか。物質的に満たされた時代には、ことさら私たちは不安でいることに耐えられず、無意識に依存や消費に走りがちだけれど、一時的にしろ、それさえ閉ざされることになった今、これをチャンスとして、ゆっくり自分の中の不安と向き合ってみるのも悪くない。
ミムラスとの出会いは、もう10年以上前、北米シエラネバダの山中だった。雪解け水の小さな流れの中に金色に輝いていたミムラス。別名モンキーフラワーと呼ばれる、ユーモラスなその花の横顔、光をもたらす明るい黄色、花弁の奥に覗く強さの象徴の赤、この花には、明るさ、ユーモア、勇気、自己意識など、不安によって導き出される自分の傾向と向き合い、自らを再構成させるヒントが詰まっているように思える。
初夏の北米で、ミムラスと出会った3か月後、私はイギリスに渡り、初めてオックスフォード郊外にあるバッチセンターを訪れた。すでに初秋の色が立ち込め、花の季節は終わっていたけれど、バッチセンターの庭では、ガーデナーの女性が白い小さな紙袋を片手に、植物に話しかけながら種を集めていた。よく晴れた日で、鳥のさえずりや風の鳴る音に耳を澄ませ、静謐な佇まいに、私はこれまでに経験したことがないほどの至福の時を過ごした。
それから数年後の夏、再びバッチセンターを訪れると、北米で見たそれよりもやや小ぶりのミムラスが、小さな池の淵にほっそりとした姿を見せていた。ミムラスの原産国は北米、同じ植物でも、土壌や水の違い、太陽の光の強さ、日照時間など、アメリカの花から生まれるフラワーエッセンスとイギリスのそれとは、微妙な違いがあることを、なんとなく、でもはっきりと確信した。
そしてまた数年経ったある夏、バッチセンターに一歩足を踏み入れた瞬間、私はギョッとした。
どうした!? 何かが違う!!
以前、訪れた時に比べると、ガーデン全体から漂うなんとも言えない淋しさと諦めの気配。それにしても、ミムラスがなぜこんなにいっぱい咲いてるの?不思議な思いに駆られていると、10年来、バッチセンターの植物の世話をしていたガーデナー(前回も、その前の時もいた)が、ちょうど1週間前に辞めたばかりということだった。庭全体がしょんぼりして見えたのは無理からぬことだったのだ。けれどミムラスはすごい! それでも、やたら健気で勇気を奮っていたのだ。
ミムラスはインパチエンスと同様、バッチ博士が、レメディとして最初に見つけた植物だ。人は身体の不調を覚えると不安になる。ただでさえ、不安や恐怖は病への扉を開ける。不安が強いと感染率も上がる(と思う)。そして病気になって、不安が大きすぎると回復が遅れるにちがいない。もし心身の健康に大きな影響を与えるのが不安だとしたら、医師であるバッチ博士にとって、不安に対応するレメディの特定は、最重要課題だったのではないだろうか。
それにしても、不安はすぐ人の心にとりつく。耐え難い不安にどうやって対処するか。感情を合理化して自分をなだめたり、現状否定をしたり、時にはお酒を飲んだり、食べたり、ショッピングしたりして、手軽に不安を解消することだってできる。だからといって不安は消えやしない。形を変えて、その人の中に棲み続ける。時には怒りとなって。時には不信感となって。
若い時、私は今よりずっと不安に囚われていたと思う。それはきっと自分を、そして自分の人生を信頼することができなかったから。過去の経験を未来に投影して、まだ起こってもいない明日を疑う。人生を信頼することを放棄する。だって、信頼するって、とても内的な強さが必要だから。
で、なぜ、今はそんなに不安にならないの?と聞かれたら、やっぱり過不足なく自分を知るようになったからだと思う。生きていれば当然、いろんなことがあって、そのたびに不安になるのは仕方がない。でもある時に決意したのだ。わざわざ自分から不幸にならないって。そう決めると、心のバランスを崩すような出来事があった時も、軌道修正が起こりやすくなる。たとえ一時的に落ち込んだとしても、そして強い不安に襲われるときも、そこから一気に加速して不安のドツボにはまっていくのではなく、その淵に踏みとどまり、そうしている自分を客観的に見るようになっていく。もちろんそこには、バッチフラワーがいつもあったのだけれど。
バッチフラワーは自分の感情を見て、それに対応するレメディを選んで飲む、というシンプルなセラピーだ。つまり一見、安易な解決法のようにみえるかもしれないし、実際、とても簡単だけれど、そこには必ず、自分の感情と向き合うという作業を通す必要がある。レメディを選ぶ方法の一つとして、ベンジュラムとか、Oリングのような方法もあるけれど、私はバッチ博士が提唱したシンプルコンサルテーション(対話)を通して選ぶのが好き。自分はなぜそんなふうに感じるのか、それはどこから来ているのか、いつからなのか、事実は本当にそうなのか...等々、自分の感情の歴史を紐解いてくのは、自分と自分の周辺の世界へのまなざしを、しなやかに強く豊かに育てていくことにつながる。時間もかかるし、地味な努力だけれど、それでしか再構築は起こらないような気がする。
不安を不安でなくす最も効果的な方法は、意識化することだ。私たちは無意識にすぐに不安にとり憑かれてしまう。そうして未熟な方法で解消してしまう。だから不安を不安として気づくことはとっても大切なプロセスだと思う。まず自分が不安であることを自覚できたら、「あんたはえらい」ということだ。
バッチフラワーは、レメディというツールを使って自分をより深く知っていく内面への旅の同伴者だ。茶色の小瓶を携えて、さあ、不安になったら、ミムラスを飲もう!
バッチセンターの研修センターのテーブルには
ミムラス、アグリモニー、ワイルドオートが
ビスケットと一緒に。
バッチフラワーと七つのカテゴリー
「不安と恐怖」
ミムラス・アスペン・チェリープラム・ロックローズ・レッドチェストナット
「内心の不確かさ」
スクレランサス・セラトー・ゲンチアナ・ゴース・ワイルドオート・ホーンビーム
「現実への無関心」
ハニーサックル・マスタード・ワイルドローズ・クレマチス・オリーブ・ホワイトチェストナット・チェストナットバッド
「淋しさ」
「敏感過ぎて影響を受けやすい」
「失意と絶望」
スィートチェストナット・スターオブベツレヘム・エルム・クラブアップル・パイン・ウィロー・オーク・ラーチ
「他者の幸せに関心がありすぎる」
チコリー ビーチ バイン バーベイン ロックウォーター
BFRP東海 レメディ研究部ブログ バッチフラワーレメディ研究室~その深淵なる世界の探究